Fahrenheit -華氏- Ⅱ

* Side Ruka *



.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.





啓の様子が変―――


って、最近思う。


いえ、元々変な人ではあるけど……


でも明らかに様子がおかしいというか―――


考えればフランスのアザールのダブルブッキングというトラブルが起きたその日からだ。


トラブルを引きずっているのかしら。でもそれぐらいの失敗で、そこまで落ち込むとは思えない。


じゃ、他の理由で?



―――理由を見つけられないまま、それから一週間経った。


一週間……


日が経つごとに疲れが滲み出ているし、少し痩せた―――?気がする。


寝不足なのか、お昼の短い休憩時間にはわざわざ駐車場まで出向いて車の中で仮眠してるみたい。


それでもわざと空元気を出しているのか、あたしや佐々木さんにはやたらと元気に喋りかけてくる。


だけどそれが余計不自然だった。


セントラル紡績さんとトラブルがあったのだろうか。


啓はアザールの入札問題で、セントラル紡績の真咲さんと電話でやり合っていた。


あたしが見る限り、知る限りでは啓はお客さんに対してあんな口調で怒ったりしない。


ましてや相手は女性で―――




しかも美人だ。




いくら理不尽なことを言われようと頭を下げ続け、どんなわがままにも極力相手の言い分を聞き入れようとする。


これは相手が男だろうと、女だろうと取引の大小関わらずその姿勢は一定だ。


自分にはできないそのひたむきな一生懸命さを、あたしは尊敬していた。


いえ……今だって尊敬している。


だけどあの時の啓は―――まるで真咲さんを突き放すような冷たい物言いだった。




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