同窓会
隠していた情熱
私が綺麗になろうと思ったのは、大石くんへの片想いを情けないかたちで終わらせた自分から抜け出したかったから。

虚勢でも自信をつければ、過去にさよなら出来ると思ったから。

「…っ」

今日、大石くんの顔を見るまでは、自分は変われたんだって思えてた。

あの頃の情けない自分から成長できたんだって思い込んでいた。

だけど、本当は大石くんの姿を探してしまう私がいて、大石くんの笑顔にくぎ付けになった私がいた。

あれから恋愛なんて少しもしてこなかったし、コミュニケーション下手も何一つ変わってなかった。

ザッ

聞こえてきた音と気配に、顔を少しだけ上げると視界にスニーカーが入ってきた。

「片桐。」

声を聞いて、身が強張る。

「泣いてるの、俺のせい?」

「…ち、違う。」

本当は違ってないけど、こんな情けない私を知られて呆れられたくない。
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