同窓会
「片桐。」

大石くんの声は私の心に切なく沁み込んできて、逃げたくなった私は足を踏み出す。

「逃げずに俺の話聞いてよ。」

そして、あっさりと大石くんの手に捕まってしまう。

どうして大石くんの声もそんなに息がつまりそうなくらいに切ないの?

「一度でいいから、俺と向き合って。」

その言葉は今の私に向けられたものというよりも、この3年間の私に向けられたものだった。

好きな人に向き合うのが怖かった臆病者の私。

「…わかった。」

私の喉から出た声は、情けなくなるくらい細くて頼りなかった。

「ありがとう。」

優しい声色に振りかえると、目の前に大石くんの顔があって、距離の近さに一気に体が熱くなった。

「片桐は俺のこと嫌いかも知れない。すげぇうざい男だと思ってるかも知れない。だけど、俺はずっと片桐が好きだった。だから一度でいい。俺のことちゃんと見て。」
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