【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~

陽色狼の日々





明け方…明るくなり始めた空を見上げるとまだ白く薄い月が見えた。



濃いグレーのスラックスに素肌にシャツだけをひっかけて、屋敷の部屋の障子に肩を凭れさせながらそれを見上げた。



「……。」



不意に敷かれた背後の布団からぞもぞと動く気配に振り返る。



「……もう、行かれますの……?」



気だるげにぼんやりとした掠れ声が私を呼んだ。



「…寝ていなさい。まだキツイだろう…?」



近づいて屈み込み、ようやく…と言った感じで何も身につけずに上体だけを起こす彼女の細い顎をとると、乱れ…小さな顔にかかる長い髪をはらってやる。



「今日はおまえの待ちに待った日だろう?

姫君にそんな妖しげな顔は向けられないのだから…もう少し寝なさい。」



目を細め…唇を僅かにはみながら言ってやれば、非難でもするように頬を膨らませた。



細く小柄な身体、小造の顔に大きな瞳…どこか幼いその容姿がそんな顔をするとますます幼くなった。



「誰のせいです…?あたくし、今日をとても楽しみだと言っていたのに…。

…酷い方…。」



じとりと上目遣いに私を咎めるように睨むその顔が…









…一番好きだ。








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