龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】

相手が好きだからといって嫌な事を我慢する事はないと圭吾さんに言われて

手首をつかまれたり、押さえ付けられるのは嫌いとはっきり言ってしまうと気が楽になった。

知ってしまえば圭吾さんは気をつけてくれるだろうから。


「志鶴は大事に大事に扱わなきゃならないね」

「面倒よね」

「平気だよ」

「圭吾さんは何をされるのが嫌?」

「志鶴に嫌われるのが嫌だな。それと――」

「それと?」

「他の男と話してるのは見るのも嫌だ」

吐き捨てるように言った後で圭吾さんは上を見上げた。

「ゴメン、つまらない事言った
――アイスクリームあるけど食べる?」


圭吾さんは優月さんの事を思い出して言ったんだ。

圭吾さんを捨てて別の人を愛したあの美しい人の事を。

わたし達の間で優月さんの名前が直接出た事はないけれど、

たぶん圭吾さんの初恋の人で

たぶん今でも好きで

子供っぽすぎて圭吾さんを困らせてるわたしにはヤキモチ焼く資格もない。


「わたし、他にも嫌いなものがあるの」

ぎこちない間が嫌で、アイスクリームを持ってきてくれた圭吾さんに明るく言った。

「何?」

「笑わないでよ?」

「笑わないよ」

圭吾さんはわたしの横に座った。

「雷」

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