男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「私は、陽になる。」


私には、双子の兄がいる。

森山 陽。17歳。

この世で一番大嫌いなお兄ちゃんだ。

見ていたバラエティー番組が終わり、CMに入る。

そこにうつっていたアイドルを見て、嫌そうな表情を浮かべると

ことりはテレビの電源を切った。


(あんな奴の顔、見たくもない。)


あいつのせいで、私はイジメにあっている。

すべてはあいつが悪い。

同じ双子なのに、陽は両親から期待されてるし

おまけに頭も運動神経もいい。

友達も多いし、今は人気上昇中のアイドルグループ「スカイ」

の中心メンバー。

(消えてくれればいいのに、)

この時はまだ、本気でそう思っていた。


「ことり〜、もうすぐお兄ちゃんが出る番組が始まるでしょ?

テレビつけないの?」

「私見ない。」

母親の言葉にそっけなく返事をすると、ことりはソファーから立ち上がり

二階にある自室へと向かった。


「まったく、あの子ったら・・・。」

そんな様子のことりを呆れたような表情で見ながら、

母親はテレビをつける。

そこには、インタビューをうけている「スカイ」のメンバー達が映っていた。


『新曲がでるんだって?』

『はい、CDが明日発売されるんです。

みなさん、よかった買ってみてください。』

愛想笑いを浮かべた陽の表情を見て、インタビュー会場にいたファンは

歓声をあげる。

『キャー!!陽くーん!』

そんなファンに向かって、ファンサービスで手を振れば

歓声が悲鳴に近いくらい大きくなった。





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