男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


「陽君、...僕から、頼みがあるんだけど。」

「頼み?」

「ことりを、コンサートに出させてやれないかな。」

「え?」

予想外の頼みに、陽は目を見開いた。

ことりも、驚きを隠せず楓を見る。


「陽君に比べれば歌唱力もないし、ダンスも下手だけど、

ことりは必死で努力してきたんだ。

それに、ことりのおかげでスカイのメンバーは変わることができた...んだと思う。」

「楓...。」


「僕は、ことりに出てもらいたい。」


陽は迷う。


今まで、スカイのメンバーとして自分はことり以上に努力してきた。

今回は意識不明だった為に、ダンスレッスンをしていない彼は

コンサート用のダンスは完璧に踊れないだろう。

しかし、陽なら短時間で完璧におぼえられる。

楓ならそれを知っているはずだ。


しかし楓は、自身がことりと一緒にステージに立ちたいから

ことりに出て欲しいと言う。

陽はそう解釈した。


「ことりは、スカイのメンバーじゃない。」

「違う!ことりはスカイのメンバーで、俺達の仲間だ。」

はっきりと楓がそういえば、陽は困ったような表情を見せる。

どうすればいいんだろう。


「俺、まだ目を覚まさない方が良かったな。」


ぽつりと、陽は呟いた。






< 113 / 213 >

この作品をシェア

pagetop