男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「これ、つまらないものですが...
お母様とことりちゃんが協力してくれたおかげでなんとかなりました。
有難うございます。」
大きな紙袋を母親に差し出す。
「いえ、そんな。ことりにも良い経験になったと思います。
あの子、最近生き生きとしているようで依然と変わったんです。
こちらこそ、有難うございます。」
母親は軽く頭をさげると、木村は いえ、そんな。 と声をあげる。
「陽さん、今日のダンスレッスン来れますか?」
「...はい。」
「明日リハーサルなんですよ。新曲のダンス、できる限り覚えてくれると助かります。」
「今日中に覚えます。」
「陽さんなら大丈夫ですね、期待してますよ!」
では、また後で。と木村は背を向けた。
どうやら彼はこれから仕事があるらしい。
車に乗り込み、あっという間に行ってしまった木村の後をぽかんと見ていると
突然携帯が鳴った。
ことりからのメールだ。
__今日、ダンスレッスン終わった後予定あいてる?
陽は家に入り、制服に着替えながらメールを返す。
『9時くらいになるけど、あいてるよ』
昨日、ことりとは気まずいままだったのにまさかメールが来るなんて思っていなかった。
依然ならメールはおろか会話もロクにしていなかった為に、素直にうれしくなる。
やはり、自分の代わりにスカイで活動していた事は大きく影響しているのだろうか。
__楓君の妹の彩乃ちゃんに、家に泊まりに来ないかって誘われたんだけど行きませんか。
不自然にも敬語なところがことりらしい。
楓の妹とは会ったことないが、名前は知っている。
そういえば、ことりと同じ学校に通っていたことを思いだし
何時の間に友達になったんだろう、と不思議に思った。