男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-

涙を必死で堪えて頷くと、メンバーは笑った。

「彩乃も来てるでしょ?」

「うん」

「協力してもらう。」

そう言い、楓は彩乃にカチカチとメールを打った。




『陽く〜ん!!!』
『郁〜っ!』『柚希ー!!』
『楓ー!!!』『南く〜ん!!』

楽屋にまで、ファンが自分達を呼ぶ声が聞こえた。

これ以上待たせるわけにはいかない。


『スカイ〜っ!!!』


ことりのメイクが終わり、ウィッグが被せられる。

着衣室で衣装に着替えると、ことりは陽へと変貌した。


「…行こう。」


郁の声に全員が頷く。

楽屋を出て、ステージに向かった。

今までで1番だと言えるくらいの緊張感がことりを襲う。

ステージ裏についた瞬間、声援が更に近く聞こえ、冷や汗が頬を伝う。

BGMが流れ出す。


これは、始まりの合図だ。


「おっ先〜!」

南がバシっとことりの背を叩き、先にステージに駆け出して行く。

それに続き、柚希もステージにでていく。

すれ違い様にことりの頭にぽん、と手をおいた。


歓声が徐々に大きくなっていく。


「成功させような!」


郁が優しくことりに微笑み、ステージに出る。


「…ことり、手。」


楓に名前を呼ばれ、彼の方を向けば片手をあげる。

つられてあげれば、楓は自分の手とことりの手をパン、とあわせた。

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