男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-

「私、お兄ちゃんの事、何も知らなかった...。」

陽の手を握り、ことりは続ける。

「...でね、お兄ちゃんが戻って来やすいように

私、仕事も頑張るから...はやく、目を覚ましてね。」

反応がない陽を見て、ことりの表情はさらに歪む。

これ以上涙が零れないように、口をぎゅっと紡ぐ。

腕で涙をふいて、ことりは笑顔を見せた。


「お誕生日おめでとう、お兄ちゃん。」













「...。」

奥村楓は、自室のベッドで寝転んでいた。

(陽と同じパートなんて、嫌だ)

頭の中にあるのは、そのことばかり。

しかし、二人で練習しなければきっとダンスは成功しない。


「....明日、同じパートのメンバー変えてもらうように

頼もう。」

楓はそう呟き、瞳を綴じた。










もうすぐ待ち合わせの時間だ。

ことりは病院を出て、郁に言われた場所に向かう。

ここからすぐの場所の為に、5分でついた。

少し早くつきすぎてしまったらしい。

郁はまだいなかった。

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