男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


「お前には関係ないだろう。」

うっとおしい、というような視線を向けられことりはうっと言葉を詰まらせる。

たしかに自分はおせっかいかもしれない。

けれど、このまま柚希を放置して帰るなんてできない。

「...。」

彼女は少し考え、ひらめいたように手を叩いた。

「それじゃあ、家くる?」

「え、」

「やっぱり、こんなところで野宿は良くないしどうせなら俺の家おいでよ。」

ことりは何も考えず言った。


グループ内でもそんなにことりとは仲良くない。

自分はどちらかと言えば嫌われてる方だと思っていたのに、

突然家に来ないかと誘われて動揺を隠せない。


「柚希。」

「...いいのか?」

「うん。こんなところで野宿するよりマシだろ?でも、ちゃんと木村さんに連絡いれろよ。」


はたから見ればどちらが年上かわからない。

そんな自分に、柚希はフッと笑った。

「ああ。」

「じゃあ、お母さんに電話してくる。」

ことりは柚希から少し離れて携帯を取り出すと電話をかけた。

何回かコールが続いたあとに、出る。

『ことり、アンタ何処ほっつき歩いてるの?まだ練習は続いてるの?』

「今帰るよ。でね、お願いがあるんだけど...。」

『何?』

「スカイのメンバーの一人を、家に泊めてあげてほしいんだけど...。」

『別にいいけど、大丈夫なの?男装バレないの?』

「あ。」

そこまで考えてなかったことりはハッとした。

けれどもう遅い。

大丈夫、としか言いようがなかった。

「...お母さんも協力してね。」

『しょうがないわねえ...わかったわよ。』

気をつけて帰って来なさいよ、と言い残し通話は終了した。

ことりは携帯をポケットにしまうと柚希の元に戻る。

「良いって言われたから、行こ。」

「...すまないな。」

「気にすることないよ。」
< 74 / 213 >

この作品をシェア

pagetop