御曹司の溺愛エスコート
「わかった……条件がある」

「条件?」

「前に住んでいた場所ではない所へ住むんだ。もっと治安の良い場所へ」


桜が安全に過ごしてくれるのならば金に糸目はつけない。


「蒼真兄さま」

「そうでないと心配で手放せないよ」

「ありがとう。蒼真兄さま」


ひとりになって……蒼真兄さまから離れて考える時間が欲しい。
きっと寂しくなっちゃうんだろうけど、このままではいけない気がした。
だから私は蒼真兄さまの元を離れる事を決めた。


「桜」


桜の華奢な身体を引き寄せると、息もつかせぬくらいの口づけを交わす。


桜がいなくなってやっていけるのだろうか……。


自問自答しても実感が湧かないから考えつかない。
愛しい人を駄目にしないためにも行かせるべきなのだろう。


「愛しているよ。桜」


桜の胸が甘くきゅんと音を立てた。


大好きな蒼真兄さま……。
私はこの人の元から離れる事ができるの?


蒼真のぬくもりをもっと感じようと桜は身を寄せたのだった。





< 344 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop