御曹司の溺愛エスコート

「ん……おみ……ず……」


苦しそうな声の桜は意識が朦朧としているようだ。


蒼真は我に返り、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルのキャップを取った。


「桜、水だ」


桜の状態を少し起こし、ペットボトルの飲み口を口にあてがうとコクッ、コクッと喉を通っていく。


その頼りなげな姿を見ると、小さい頃の桜を思い出した。
家に引き取られた頃はよく熱を出す子供だった。
両親を突然亡くしたショックで熱を出していたのだ。


桜に興味のない蒼真の両親。
南条夫妻が桜の面倒を見てくれた。


留学から帰ってきた蒼真は研究などで忙しかったが、時間がある時には必ず桜を遊びに連れ出した。


水を飲むと桜は落ち着いたようで深い眠りに落ちた。



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