天使のキス。
その動作による空気の揺れで、さっきよりも鮮明に感じる愛里の香り。


今朝まで全く感じることのなかったその香りに、佐久間健の姿がよぎる。


――と、同時に、アイツの言葉がフラッシュバックした。


『気まぐれかな?』


そう言って、挑戦的な瞳をオレに向けたアイツ。


いや、あれは。
気まぐれなんかじゃ、絶対ないはず。


綿密に計画して用意された――…


そこまで考えて、オレは考えることを放棄した。


面倒くせ。


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