若恋【完】
夜明けの花



―――夜明け。



ビル内を制圧して、奏さんが正面に姿を見せた時。


「奏さん!!」

仁お兄ちゃんの静止を振り切り奏さんに泣きながらしがみついた。



生きてる。
生きてる。
無事だった…



みんなが見てるのにこんな時に抱きついたってダメなのに離れたくない。


生きてる。
それだけでいい。
離れたくない。



「急ぎここを離れるぞ」

抱きついたわたしをひょいと抱えて口の端だけをあげる奏さん。


「りおさん、警察がきます」
榊さんの言葉に、

警察?

ビクッ



「大丈夫。兄貴ふたりにはちゃんと話しは通してある」

前にわたしが巻き込まれて怪我をした発砲事件も新聞には載らなかった。

きっと今回も大事にはならないんだろう。



「引き上げるぞ」



仁お兄ちゃんの一言で一斉に車は走り出した。



夜明けに見た紫色の道が花のようにきれいだったのを忘れない。





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