危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
妹の脅威と……
「ねえ……」

涼を上目遣いで見ながら話し掛けると、

「ん?」

と涼は私に顔を向けて返事をくれた。

私は涼のこの“ん?”が好き。


「全力を出してよ」


「何を?」


「テスト。涼の実力は、あんなものじゃないでしょ?」


「どうかな。でも、何で?」


「だって、みんなを見返してやりたいじゃない?」


「別に……。そんなのどうでもいいよ」


そう言って涼は視線を前に向けてしまった。


「じゃあ、涼自身のため……」

と言い直すと、


「俺の?」

と言いながら、涼は私に視線を戻してくれた。


「うん。わざと悪い点を取るなんて、絶対変だよ。涼は涼らしくすればいいじゃない。ありのままに……」


「でもそうすると、また兄貴と比べられるんじゃねえの?」


「“比べるな”って言えばいいじゃない? “兄貴は兄貴、俺は俺だ”って言えばいいでしょ?」


涼はそれに答える事なく、ボール遊びをしている二人の少年達をジッと見ていたと思ったら、いきなりスクッと立ち上がった。


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