朝が待てなくて

もうひとつの恋


祐二さんが泣くもんだから、こっちまで泣けてきて、2人並んでベソをかいていると


コンコン、と病室のドアがノックされた――。




「はい?」


ドアを開けて顔を見せたのは、なんと香美さんと美里さんだった。




「樹、大丈夫なんでしょ?」


彼の容態については、すでに祐二さんからのメールで知っているようだ。


「えっ、ああ、うん」


祐二さんがあわててグシッと、そで口で涙を拭っている。フフ。




香美さんたちは樹のベッドまで歩み寄り、枕元に立って、すやすや眠る彼の寝顔をのぞき込んでいた。


「爆睡してて起きねーんだよ」


「プフフ、樹らしいね」


祐二さんの説明に香美さんが笑う。





「もう……びっくりするじゃん」



美里さんのきれいな指先が樹の髪にそっと触れた。


ベッドの上に注がれる柔らかな視線にドギマギしてしまう。


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