超現象管理人 パイロキネシス編
序章
小さい頃、パイロキネシスを恐れた両親に施設に連れて行かれた。
でも、俺はなじまなかった。なじめなかったんではない、なじまなかったのだ。

幼心にいつか、両親が迎えに来てくれると信じていたからだ。

でも、両親が迎えにくることはなかった。
12年で俺の心は荒んで行った。
そんな中、信頼出来るのが母だった。母といっても実の母ではない。施設の施設長だ。
「真ちゃん、平穏な心を忘れないでね」
それが口癖だった。
怒ればどこかしらが燃えるからだとういうことは分っていたが、母に言われるとカチンと来ない。自分でも不思議だった。
施設の中で俺のパイロキネシスを知っているのは母だけだった。


柳の名字は母の養子になってからのものだが、もともとの名字は知らない。3歳の子供の頃なんて覚えがなかった。
「知りたい?」
と母は言ったが知りたくないと言った。会いたくもなかった。

暖かい日差しの春に公園のベンチで遊ぶ子供を見ていた時だった。
「炎が怖い?」
誰かの声がした。
「自分が怖い?」
母と両親しか知らない能力。その時、気付いた。声が聞こえているんじゃない。頭に聞こえてるってこと。
「テレパシー?」
声に出して言った。テレパスではないからだ。
すると嬉しそうに「そうだよ。柳真君」
俺の座ってたベンチの後ろにあった木からひらりと男が飛び降りて来た。
黒髪に黒い瞳。スタイルもよくいわゆる『かっこいい男』だ。
「柳君の事はずっと前から知ってたよ」
にっこりと笑った。
「俺は鷺ノ宮佳伊。宜しくね」
と握手を求めて来た。俺は手を出さなかった。
「お前、何者だ?」
「怖いな〜同じ能力者だよ〜もっと色々できるけどね。例えばこんなの?」
手のひらを上に向けると一瞬で炎が出た。
「!ばっ馬鹿!」
俺は慌てて自分の手で炎を消した。
「誰かに見られたらどうすんだ!」と怒ったが佳伊はにっこりとそのまま握手した。
「力の怖さを知ってる。合格だね」
「は?」
「実は君をスカウトに来たんだ。中学卒業するだろう?」
「何でそんなこと知ってるんだ?」
「調べたもの」
にっこりと微笑んだ。
もし、俺が女だったら惚れるんだろうな。という綺麗な顔で微笑んでた佳伊を見て思った。突然の出来事に頭がついていかなくなったようだ。
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