天神学園高等部の奇怪な面々Ⅳ
佐伯 雪菜は笑いを噛み殺す
校舎内に長い影が伸び始めた。

狂おしいまでに照り付けていた日差しがやや弱まり、廊下を、教室を赤く染める。

夕暮れ。

夏は日照時間が長い。

いつまでも昼間の狂乱の如き暑さの余韻を残したまま、むせ返るような熱帯夜を迎える。

「まだ暑いですねぇ…もう夜七時になろうかっていうのに」

天神学園保健室。

雪菜が両手をパタパタさせて顔を扇ぐ。

天神学園は、それ程金持ちではない。

名門校ともなると各教室にエアコン完備などという豪華設備が整っているものだが、この学園にエアコンなどという文明の利器が装備されているのは保健室や宿直室だけ。

教室で涼を取るには窓を開けるしかないし、職員室でさえ扇風機しかないのだ。

自然と今夜校舎でお泊まりする事になる龍太郎達は、郷のいる保健室に集まっていた。

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