幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
落ちこぼれ魔導士

 1

何か忘れている気がする

何だったけ……

あたしはもう一度、魔術書を見た。


魔法陣は二重円に五ぼう星という単純なものだし、呪文も短い。

何度も練習して暗記しているほどだ。


大丈夫

間違えっこない

小さなサラマンダーくらい簡単に召喚できますとも


あたしは心を落ち着けて魔法陣の中央に立った。


「開け異界の門よ

 光もて我を門へ導け力の道よ

 魔術の神、異界の主、偉大なるトーンの名において我召喚す

 いでよサラマンダー

 火の精霊よ」


赤い光が魔法陣の外側の円から天井に向かって立ちのぼった。


でもその時、あたしは肝心な事をやり忘れていたことに気づいた。


窓を開けていないのだ。


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