幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~

 3

着替えている時間はなかった。

ホークのことだ。

『すぐ』と言ったら『すぐ』だ。


あたしは、なめし革の袋に大事な物を詰めた。


王妃様の手紙、

瑠璃宮のタペストリーの写し、

エーンバルのタペストリー、

ユニコーンのタペストリーは折れないので丸めて突き刺した。

サラマンダーの布は腰の帯に挟み込む。


「魔導士としては最悪ね。荷物が多すぎるわ」

あたしは自嘲ぎみに呟いて、袋の紐を肩から斜めにかけた。


最後に、あたしはラドリーン姫のタペストリーの前に立った。


もうここへ来る事はないだろう。


これはきっと<異界>の光景なのだ。

<扉>の向こうに見えるのは、この修道院だから。


「ラドリーン姫、どうか王妃様をお護り下さい」

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