幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~

 4

レディ·クリスタルの後に王妃様が入って来て、<謁見の間>の真ん中ほどで立ち止まった。


「どういうつもりだ、クリスタル?」

王が冷たく言った。

「王妃を連れて来いと言った覚えはないぞ」


「今、『捜してこい』とおっしゃったばかりではありませんの。手間を省いて差し上げただけです」

レディ·クリスタルは艶やかに微笑んだ。

「さあ王妃様、前へどうぞ」


でも、王妃様は微動だにしなかった。

誇り高く頭を上げ、前を見つめている。


「使者殿」

王妃様はきっぱりとした口調で言った。

「御役目は承知していますが、王の御前でまで王の代わりを勤める必要はありませぬ」


「好きにすればいいわ」

レディ·クリスタルは吐き捨てるようにそう言うと、一人でさっさとこちらに歩いて来た。

そして驚いた事に、そのまま階段を上ると、玉座の傍らに立った。


王の寵姫――

そういう事か。

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