幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
罪なき者の守護者

 1

石棺は亀裂から二つに分かれ、門のようになった。

その間から出て来たのは、アルス村で戦った大蛇と同じ、本物のヒュドラだった。

アルス村の時のよりも二まわりは大きい。

あの時は、脱皮直後でまだ小さかったという事なんだろう。


――気をつけろ。まだいるぞ

ジャルグが言った。


後ろからもう一匹、同じくらいの大きさのヒュドラが出て来た。


「二匹も?!」


――つがい、だな


「冗談でしょ? 殖えちゃうじゃないの!」


――それが狙いだろ? あの二匹をどうやって育てたかは、あんまり考えたくねぇな


アルス村の納屋で見た光景を思えば、あたしも考えたくない。


「長槍で動きを封じろ! 首を落とすのだ!」

王様の声がした。


――この槍の数で、二匹いっぺんには無理があるぜ

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