幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
真夜中の伯爵夫人
少年はこっそりと揺り篭に近づいた。


砂色の髪の赤ん坊が、すやすやと眠っている。


最初に見た時は、金髪じゃなくてちょっとガッカリとしたのを覚えている。

でも今は、金髪の赤ん坊なんてどうでもいい。


透き通るような丸い頬にそっと触れる。

半開きの花びらのような唇が、寝言を言うように動いた。


「まあ、若様。いつの間にいらしてたのです?」

振り向くと、赤ん坊の母親が立っていた。


「手は洗ったよ。口もすすいだ」

少年は慌てて言った。


赤ん坊は病気に弱い。

大人達がそう言うのを何度も聞いていた。

きっとその通りなのだろう。

こんなにも小さいのだから。


赤ん坊がパッチリと目を開けた。

灰色の瞳が少年を見て輝いた。


『ダッダッダ』

赤ん坊は声を上げた。

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