幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~

 2

ホークが王都へ旅立つ前夜、あたしと母は伯爵家の晩餐に招かれた。


おそらく、先代伯爵夫人の希望だろう。

客人達とだけでは気詰まりなんだと思う。

先代伯爵夫人は、レディ·クリスタルとどうにもウマが合わないらしく、ここしばらくは気分がすぐれないからと、自室で食事を取っていた。

その話をミリーから聞いた時は、危うく吹き出すところだった。

あたしが知っている限り、先代伯爵夫人は馬並に丈夫な貴婦人だ。


「さすがに厚顔な奥様でも、伯爵様がお出かけになるとあっては、顔を出さないわけにはいかないものね」

母が、出迎えたミリーに言った。

乳姉妹の気安さからだろうけど、かなり失礼。


「わたしは、最後まで部屋に立て篭もると思っていましたよ」

と、ミリー

「奥様もまるくなったものです。やっぱり年ですかねぇ……」

こっちもかなり失礼だ。


「二人とも、聞こえていてよ」

ミリーの後ろから先代伯爵夫人の声がした。

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