モラトリアムを抱きしめて
幸せになりたいわけではない。

ただ、普通の。人並みの人生を歩みたいだけ。

夜は好きだった。

明日に期待して、時にはずっと静かな夜でいてほしいと願った。

昔と変わらない夜空の星が、叶わぬ夢を聞き入れてはくれない事を、私は知っている。

今日も星が沢山。

いくらバラ撒こうが、私の願いを叶える星はないのだ。

そう思うと、ただの石ころに何を期待してるんだって、笑ってやりたくなった。

はっちゃんを残し、家を出ると夜が深くなっていた。

駅までやってきたけれど、もう電車もないだろう。

飛び出してきたのはいいけれど明日にすればよかったかしら。

今じゃなければ、決意が揺らぐだろうけど。



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