欲望チェリ-止まらない心
完璧なカレシ
―――5月








高校の廊下を春の爽やかな風がすり抜ける。



「お~い、橘!これも頼む!」


――え?


ずっしりと資料を抱えて廊下を歩くあたしの背中から、先生の声が追いかけてきた。


「資料室に運ぶついでに、これも頼むわ!」


そう言って先生は


両手のふさがるあたしの代わりに、数冊のノートを資料の上に重ねてくれた。


もはやあたしの視界はゼロに等しい。


ちょ、ちょっとぉ…


資料の重みで両手がプルプル震える。


だけど先生は


「橘がいると助かるよ!」


な―んて笑顔で言うと、そのまま去って行ってしまった。


ポツンと廊下に取り残されるあたし。


いくら学級委員長だからって…


あたし先生のパシリじゃないんですけど~!?


なんて毒づきながらも、あたしも内心嫌じゃなかったりする。


だからきっとダメなんだよね。


< 7 / 488 >

この作品をシェア

pagetop