I LOVE YOUが聴きたくて
綾は、懐かしく思い出していた。

【三年生になった頃、初めて話かけられたなぁ。それまで、話したことがなかったのに、何度か話をしたりして、何だか変な感じだったけど、まっ、今となってはいい思い出ね】

綾は、笠原 修がいきなりタオルを貸してくれたことを、懐かしく思い出していた。

そして、ひとり、ふと笑う。

「何?急に笑い出して」

泉が、妙に思って不思議そうな顔をしている。

「何でもない」

綾は、すぐにごまかした。

「何よぉ。どうしたの~?」

「何でもなぁい」

綾は、笑いながら、わざと泉から離れるように駆け出した。

「何~?」

泉は、綾を追い掛ける。

綾は、わざと、泉から逃げようと、校舎裏の中庭の方へと走っていった。


「あ、早乙女さん!」

綾は、男子の声に呼びとめられた。

綾は、不意に立ち止まり、振り向く。

「あっ…」

見ると、笠原 修が綾の方へと駆け寄ってきていた。

「卒業おめでとう」

修は、爽やかな笑顔で綾に言った。

「卒業おめでとう」

綾も、笑顔で言う。

「はい、コレ」

修は、そう言うと、綾に花束を差し出した。
「え?私に?」

綾は、少し躊躇した。

「そうだよ」

「あ…。私は用意してなくて」

「気にしないで。朝、買ってきたんだ。受け取って」

「笠原くんが?」

「うん。早乙女さんにピッタリの花を選んだつもり。受け取ってよ」

修は、恥ずかしそうに言うのではなく、堂々とした、彼らしく、クールで爽やかだった。
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