頭痛
第六章 その後
「ふーん」

 煙草をくゆらせながら、車の助手席で、凪子は言った。

 相も変わらず、雨上がりの路面は、ヘッドライトを乱反射して、運転者の視界を奪っている。

「何だか、本当の話みたいに聞こえたわよ」
 凪子は秋史の方を向いて言った。

「煙草は止めたんだ。煙をこちらに向けないでくれるか」

「あら、ごめんなさい」
 凪子は持っていた煙草を、何の躊躇もなく外に弾き飛ばした。

「あなたがそんなお話をするって、意外ね」

「そうか、意外か? 確かに誰にも話していない内容だな」
 秋史は笑みを浮かべる。

「そのお話、やっぱり実話じゃないの?」

 秋史は凪子の問いを流して、不敵な笑いを作った。


 二人を乗せた車は、ようやく現れた道路沿いの軽食屋の駐車スペースに入って、緩やかに止まった。

「珈琲でも飲んでいこう。この話をすると、頭が痛くなって疲れるんだ」

「そうなの。そんなに辛いなら、無理しなくても良いのに」

「一度は誰かに聞いて貰いたかった話なんだ」

 二人は車から降りると、店の中に入っていった。
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