頭痛
第二章 続
 あの爆発事故から、十年が経とうとしている。秋史の実家で起った、ガス漏れ事故である。
 警察は状況証拠から、早々に事故と断定し、事実上、捜査は打ち切られた。
 しかし、世間への反響は大きく、秋史の母、妹、叔父の三人が犠牲になった不幸で凄惨な事件として、当時の新聞の一面を飾ったのである。

 事件後、程なく秋史は大学を中退した。偶然知り合った大学院生の秀才グループと結託し、金が金を生む、株の同好会を結成した。
 同好会では法律に抵触する寸前の株取引手法を、秋史のアイデアを元に編み出すことに成功する。その手法を武器に、個人資産の管理運用会社を立ち上げ、市場が大きく乱高下する中、安定した収益を叩き出し、結果的に莫大な利益を彼等にもたらした。

 その時期を境に、秋史がお金に困ることがなくなったのである。

 短期間でここまで成長できたのも、秋史に運用資金があったことが大きな理由だった。
 爆発事故により、秋史には残されたものは、実家の土地以外に、母と妹の保険金が入っていた。

 警察は受取人の秋史に、有り余る嫌疑の目を向けた。
 しかし、多数の目撃者を有する当時のアリバイを、崩すことなど出来ず、秋史の飛躍を傍らで眺めるしかなかった。

 ある夜、そんな秋史の家に、一本の電話が掛って来たのである。



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