都筑さんを見送った私は、やっと1人になった。一気に気が抜けて、玄関のドアが閉まるなりペタンと、その場に座り込む。

 出て行く間際に都筑さんが言った言葉が、頭から離れない。私は何処を見つめるわけでもなく、ボーっと都筑さんの言葉を思い返していた。

    *

    *

 玄関で見送る私に都筑さんは、ネクタイを締めながら口を開いた。

 「昔話は、おいておいて。コレだけ、言わせてください」

 え? 目をパチクリさせる私に都筑さんは、笑って、続ける。

 「初めは、『婚約者』と、名乗るつもりだったんです。ですが状況が変わってしまいまして」

 あ――……

「それ、前に―― 」

 「はい。咲子さんは僕の事を尚美さんから聞いていないようでしたし、まだ若いですからね、急に結婚だと言ってしまうと、引いてしまうと思ったんです。会って直ぐ僕が言っていたら、咲子さんは引いていたでしょう?」

 問いかける、都筑さんに、「そ、それは……」そう、だと、思う……。と、私は素直に頷いた。

 「でしょう? ですが、僕は頑固なんですよ。こうと決めたら、こう。だから、咲子さんとの結婚は、僕の中でもう決定事項なんですよね」

 サラリと、当然のように言った都筑さんに、私は目が点になった。

 「けって??」 い、事項!?

 ちゃんと言葉にならず、間抜けな単語だけが出て、ポカンとする私を見て都筑さんは笑いながら続けた。

 

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