知らないっ! もう帰る!! と、 私は足に自然と力がこもり、早足になる。そんな早足、いつものスニーカーなら何も問題は無かったのに、履き替えた靴は、そうはいかない。

 っあぁ!! と、なった時にはもう遅い。視界に地面が近づいて、気付いた時には床に手を付いていた。

 普段履かないヒール。そんな靴での早歩きは、どうも無理だったようで、私は転んでしまった。

 ジンッと痛む手、足。クスリと笑う声に、胸がキュウッと痛くなった。恥ずかしい思いがいっぱいで、それを上塗りするように悔しさが押し寄せる。

 転がるビー玉が何故か切なそうに見えてならなかった。

 「大丈夫ですか!?」と、駆け寄る都筑さんに思わず立ち上がると、履いていた靴を投げつけた。

  完璧に八つ当たりな事くらい分かっていた。だけど、こんな事になったのも、全て都筑さんのせいだから、怒りをぶつけずにはいられない。

 涙目になった私は、都筑さんを睨みつけると、裸足のまま、走って店を去る。

 「咲子さん!!」 

 呼びかける声。追いかけられいるであろう足音。私は、路地の物陰に隠れて、座り込み、都筑さんが走り去るのを、物陰から見ていた。



 フッと手の平に目線を落とす。

 私のビー玉、無くなっちゃった……。別にビー玉はアレ1つなわけじゃない。だけど、宝物だった。私の、大事なものだったのに―――……。



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