どうして都筑さんに付いて行ったんだろう。知らない人に付いて行くなんて、何考えてるの? 今時、小学生でも、ソレはいけない事だって、分かってるわよ。なのに私ってば……。

 だから大切なビー玉まで無くしちゃうんだよ。

 「ばかみたい」と、私は小さく呟いた。

 それに、自分の服と靴。おまけに財布まで、置いてきてしまった。……仕方なかったのよ。だって、持って入れるような店じゃなかったもん。

 私の持ち物は全部、あのレストランに持ち込めなくて、レストランの入り口で預けた。なけなしの500円ですらも、この手に無い。私は今、一文無しだ。

 御飯だって、朝にパンを食べたきりで、今まで何も食べていない。もう、お腹がすきすぎておかしくなりそう。

 私は力ない体を気合で動かし、フラフラと夜の街を歩いていた。途方にくれるとは、まさにこの事。先の見えない私の人生に、深い溜息が出る。

 あ~ぁ……もう嫌。

 「お風呂、入りたい……」

 昨日までは、なんとか銭湯に行く事が出来た。けど、500円どころか、一文無しの私にそんな贅沢が出来る筈も無い。

 夏の蒸し暑さに、汗もかき、べたつく体が気持ち悪くて嫌になる。あまりの暑さに、手で顔を仰ぐも、効果無し。

 何やってるんだろう。私……。

 ヨタヨタ歩く私の足取りは、きっと危うい。

 「ったぁ!」

 足に痛みが走った。あのまま裸足で歩いていたから、足の裏に小さなガラスが刺さっている。

 「あ~ぁ。まただわ」

 もう鈍い痛みも、麻痺して分からない状態の私の足。裸足で歩き続ける私の足は、傷だらけだ。

 なによ。もう……。ありえない。どうしてこんな事に? こんなカッコだし、結局仕事も探しにいけなかった。なにやってるんだか……。

 「はぁ」と、私は溜息を付くと、座り込んで、うつむいた。

 もう嫌だ。私、生きていけない……。どうすればいいの? ねぇ、お母さん。私、どうすればいいのか分からないよ――……。



 「大丈夫?お姉さん」

 え?

 突然、軽そうな男の声が振る。顔を上げると、直ぐに分かった。どんな人なのか。

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