『若恋』榊の恋【完】
死刑宣告



最近、りおさんがじっと自分を見ていることが多い。


コーヒーを入れてくれる時や、若と他愛もない話をしている時。
買い物に行くのについていく時。



「りおさん、何かわたしの顔についてますか?」


「え?え?」


顔に何でもでてしまうりおさんは隠し事が下手だ。

こっちから切り出すと顔を赤くして慌てて俯いた。




「なんかあったんですか?」


訊ねたらモゴモゴと口の中で呪文のように呟いた。


「聞こえませんよ、りおさん」



からかうのも楽しい。

けれど、りおさんを見ていてもどこか心が欠片ていた。


「ひかるが」

「ひかるちゃんが?」

「…落ち込んでいるの。榊さんに電話しても忙しいって言われるって」

「………」

「このごろよそよそしいって。会ってくれないって」

「………」



「だから―――何かがあったのかなぁって」



< 86 / 440 >

この作品をシェア

pagetop