放課後は、秘密の時間…
第八章 慕情
まるで包み込むように、頬にそっと触れた、大きな手。

この優しい手を、あたしはよく知ってる。


「――ンセ……」


呼びかける低い声も。


「先生」

「……ぅん……」

「俺のこと、誰だかわかる?」

「……いち、かわくん……?」


ふと目を開くと、ぼんやりとした視界に市川君が映った。

不安げな目で、あたしの顔を覗き込んでる。


「はぁぁ……良かった」


大きく息を吐き出して、市川君は、少し困ったような顔で笑った。


「すげー心配したんですけど、先生」

「え?」


何で市川君が、あたしを心配するの?


「つーか、あんなヤローに簡単に襲われてんなよな」


何かを思い出したのか、ムッとした表情になって続けた。


「俺だって我慢してんのに。あいつ、勝手に触りやがって」

「市川君……?」

「先生も先生だよ。スキありすぎ」


上からジロリと睨まれて、思わず、顔ごと視線を逸らした瞬間……

後頭部に、ズキン、と鈍い痛みが走った。

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