2月14日は、バレンタインデー。女の子たちは、戦闘準備に入り、気合だって凄いもの。

 ショウウインドウだって、この季節は可愛く飾り付けられて、ピンク色で彩られ、何処もかしこもハートで埋め尽くされている。

 世間の恋人たちは、チョコレートを一緒に食べたりして、まるでチョコのような甘い空気に包まれ、それはもう、甘いヒトトキを過ごすんだろうけど、恋人のいない私には、全く無縁の、寒い日である。

 しかも、仕事は残業。むなしい事、この上なくって、会社を出て直ぐに溜息を付いた。

 「はぁ」と、付いた溜息は、白く風に流され消えてゆく。

 冷たい風は、ショートカットの私にはとても辛い。こんな日に限って、朝バタバタしていてマフラーを忘れちゃった。

 バタバタしていたのには、理由がある。出勤直前まで、チョコレートを持っていくかどうか悩んでいた。

 25歳にもなって、手作りチョコレートは、キツイんじゃないかと、綺麗にラッピングしたチョコを、カバンに入れては、出して、また入れて……。

 そんな事の繰り返しで、気付いたらいつも家を出る時間をとっくに過ぎていた。

 そのせいで、残業。自分が悪い。自業自得で、馬鹿みたい。

 チョコは持ってきたものの、結局いまだにカバンの中に入ったまま。

 私は、足を止めて、チョコを取り出した。

 「ほんっと、馬鹿みたい」

 チョコレートに目線を落とすと、ボソリ、そう呟く。

 だって、渡せるわけなんて無いのに、何を思ったのか頑張って作ってしまった。

 雑誌で恋愛運がよくって、ラッキーデーが2月14日だったのが、子供みたいに私を喜ばせた。

 だけど、よく考えて? 私。渡せるわけなんてないって事。