家に帰って、ダッシュで自分の部屋に入るなり、私は直ぐに前野さんのマフラーをほどいてゆく。

 その顔は、にやけていて締まりない。

 前野さんは優しいなぁ~なんて思えて、何だかフワフワした気分になった。思わず、そのマフラーに頬ずりする私は、部屋の電気をつけ、やっと我に返る。

 や、やだ!! なにやってるの? 私! き、気持ちわるいし、頬ずりとか変態っぽいっ!!

 思わず恥ずかしくて、バシィッと、マフラーを床に投げつける。と、私はまた青ざめて我に返る。

 「あぁ!? 前野さんのマフラーがぁ!!」と、叫び、床に投げつけたマフラーを拾い上げて「何て事を……」と、呟きながら綺麗にたたむ私は、また我にかえって、「馬鹿みたい」と、自分で自分を笑った。

 私ってば、変に浮かれてる。だって、チョコレート……前野さんに持って帰ってもらえた。それが、すごく嬉しい。

 私の気持ちは伝わってはいない。だけど、そんなのは、どうでもいい。ちゃんと、前野さんに貰ってもらえただけで、私は幸せだわ。

 だけど、そんな幸せな私を凍りつかせるモノ。そんな、最強アイテムが、机の上に散らばっていた。

 カッチーンと、凍りつく。

 しまった―――ぁ!!! と、電流が私の体に走ったかのよう。

 や、やばい。うそ……うそでしょ!?

 気持ちのこもったチョコを、受け取ってもらうのは、いいの。嬉しい事よ。だけど、気持ちがバレるのは、ちょっと……。

 いや、告白するつもりで作ったんだけど、いや、そうじゃなくって、何? えっと、だから、予期せぬ出来事って事よ!!

 もう気持ちを伝える気なんて失せてしまっていた。ただ、チョコを食べてもらえるだけで幸せ。そう、思えていたのに。

 なのに、私ってば……。なんて馬鹿なんだろう。メ、メッセージカードの存在を忘れていたなんてっ!!

 そう。私は、チョコレートに[前野さんへ]というカードを添えていた。

 「あぁ……。もぉ……」

 ヘタリと私は床に座り込む。

 どうしよう。どうしよう。ど・う・し・よ・う――っ!!!

 いや、まって!? カードだって、添えるかどうか迷ってた、よね? 私……。