宵の花-宗久シリーズ小咄-
「ああ、生き返る…」




僕が出した水を飲み安心したのか、彼女は笑顔を見せた。



その笑顔に、何となく僕もほっとする。











最初、水道水を出そうとした僕に、彼女は遠慮無く要望を差し出してきた。




「できるなら、水道の水は………」

「え?いけませんか?」

「………カルキの影響が不安で」






カルキ?






「では、どんな水ならばよろしいですか?」

「できるなら、天然の………井戸水を……」






この家に井戸は無い。







「どうぞ」





仕方なく僕は、冷蔵庫からミネラルウォーターを出した。






彼女は飲んだ。


一気に。


1リットルの水を。








「良かった…わたくし、干乾びるかと思いました」





彼女は、生気を取り戻りたらしい。


青白かった頬が瑞々しさを帯び、濡れた様な朱色に色付いていく。







「この家に、あなたの様な方がいらして、わたくしは幸運でございました。一時はどうなる事かと」




それは良かった。




庭先で卒倒されても、どうしようも無かっただろう。








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