氷狼―コオリオオカミ―を探して
願い事はいつも

咳込むあたしの背中を誰かがさする。


「大丈夫か?」

チェイサーだ。

「よくやった。偉いぞ」


もう褒められて喜ぶ年じゃないのに、あたしは嬉しかった。

この人に褒めてもらいたくて一生懸命だった日々がよみがえる。

あたしは小さな子供のようにチェイサーに抱きついた。


どうしてあたしを置いていったの?

どうして?


「ありがとう、チビ。もう帰れるぞ」

チェイサーはあたしを抱きしめた。


帰る?

この人を残して?


「そのナイフを抜いて願い事を言うといい」

イタチが言った。
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