甘くないコーヒー
明日見は、窓を開けて車を走らせた。

夏の風は、頬に暑さをもたらしたが、涙を乾かすには、ちょうど良かった。


光一朗は、おばあちゃんの次に優しい人だ。

顔は結構、イカツイけど。

私は、両親の顔を知らない。母親が不倫をして産まれた子だから…

母親は私を産むと、おばあちゃんに預けて行方をくらました。

おばあちゃんは、あんなに優しい人なのに、母親は、なんて冷たい人間なんだろう。

私は、母親にそっくりな顔をしているらしい。

私は、自分の顔が嫌いだった。子供を平気で棄てる冷酷な血が、私の体内を巡っているなんて。

その血が生きる為に必要だなんて。考えたくもなかった。


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