妹神(をなりがみ)
第5章 美紅の敗北
 夏休みが目前に迫った七月下旬の週末、俺と美紅と母ちゃんは三人そろって東京の北の方にある山崎隆平の家を訪ねた。俺の小6の時のクラスメート、そして純の遺書に六人目として名前を書かれたやつ。そして純の幽霊が間違いなく次に襲って来るだろう相手。
 隆平の住所は母ちゃんが警察に頼んで調べてもらったからすぐに分かった。この頃には警察も一連の中三連続殺人事件を、深見純の自殺に何か関係があるという見方をするようになっていたらしい。だから七人目である俺の母親の、そういう頼みはすぐに聞いてくれると母ちゃんが言っていた。
 と言っても、さすがにその自殺した純の幽霊が犯人だなんて話は警察には言わないままだったが。
 母ちゃんがあらかじめ電話で連絡していたから、隆平の家にはすぐ入れてもらえた。東京都内では珍しい一戸建ての家が多い地域で、隆平の家もそれほど大きくはないが庭までついてる一戸建てだ。
 隆平の父親はけっこう有名な大企業の管理職だそうで、小学校の頃から隆平も金持ちのおぼっちゃんで通っていた。父親は不在で、母親が俺たちを応対してくれた。小学校の頃俺も会ったことがあるはずだが、よくは思い出せない。でもげっそり顔がやつれて、同じ年頃のはずの俺の母ちゃんよりずっと老けて見える。
 おばさんは当然、例の連続殺人の事を知っていたし、隆平と俺が次に襲われる可能性がある事も理解していた。でも隆平のお父さんはそんな非科学的な話は相手にもしてくれず、その日も会社の接待ゴルフに出かけていたそうだ。
 しばらく隆平のお母さんと話をして、とにかく俺が隆平に直接会って話してみることにした。おばさんが言うには隆平はもう一カ月ぐらい自分の部屋にカギをかけて閉じこもっているそうだ。きっと悟と同じで純の幽霊におびえているんだろう。
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