-恋花火-
四、 金色


---ずっと、好きでした。


【金色 こんじき】



昼下がりの郵便局。

窓口の順番を待っていると、見おぼえのある背中。

あれ?

もしかして…

声をかけようかとためらっていたら、その背中の主は振り返る。

偶然目があって、むこうから笑いかけてくれた。


「ひさしぶりだなぁ!!」

「及川センパイ!?」


彼は、いわゆる元カレってやつ。

私は中学3年、彼は高校3年だった。

当時は3つ年上なんて随分大人に見えたけれど、今はそれほど差を感じない。

不思議だよね。


「夏休みで帰ってきたんだ」

「大学楽しいですか?」

「楽しいよ~。けど、就職が怖い!」


服装なんてちょっとオシャレになっちゃって、都会の香りがする。

センパイはたぶんモテる。

昔からイケメンで有名だったし、高校の文化祭でミスターに選ばれてたりもした。

それなのに…


「結芽は今も祥太郎の背中ばっかり追いかけてんのか?」

「正直、図星です」


センパイは笑った。

あの時だって、笑って許してくれた。

“結芽が祥太郎を好きだってことくらい、はじめから知ってたよ”

私はヒドイ女なのに、全然怒らずに、あっさり別れてくれたんだった。

センパイはそういう人なんだ。
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