君を探して
そして、オレはなぜか、深月を励ましていた。

<まだ彼氏のことが好きなら、ちゃんとそれ伝えて、ぶつかってみれば?>
<強がってると後悔するぞ。そこはパワー出しとけ>

そんなこと、本心から思った訳じゃない。

ただ、そうでも言わないと、深月に対する思いはもう喉元までこみ上げてきていて、気を抜くと思わず口走ってしまいそうだったんだ。

「さっさと別れて、オレにしとけ!」
って……。

だけど、オレの理性は深く強く、そんな衝動を押さえ続けた。

今はまだ駄目だ。

アイツをこれ以上困らせてどうするんだ?

オレの勝負は、アイツに笑顔が戻ってからでも遅くないだろ?


だけど、そんなこと分かっていても、イライラする気持ちは収まらない。


そこに深月からのメールが届いた。

<なによ! オレ様は私のこと好きなんじゃないの? なんで慎とのこと応援するの? 私が慎とうまくいって平気なの? どうしてそんなに余裕なの!?>

あぁ……。

たたみかけるような深月の言葉は、

オレの葛藤も、
イライラも、
行き場のない怒りも、

全て消し去ってしまった。


そして、オレの中に残ったのは、虚しい気持ちだけだった。

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