君を探して
その時、教室のドアが開いた。

ドアを開けたのは、朝練から帰ってきた陽人だ。

「うぉ!」

陽人は、私とヤマタロを見た途端、そんな低いうめき声をあげた。

そして、教室には入らず、無言のままドアを閉めてしまった。

……今のは、何?

「なんなんだ、アイツは……」

ヤマタロは首をかしげると、陽人を追って教室の外へ出て行った。


陽人も知っているんだ……。


「もう! どいつもこいつも、子供なんだから!」

チョコも、あきれた顔をして自分の席に戻ってしまった。



1人取り残された私は、椅子に座り、ヤマタロのノートを開いた。

ノートは、小さくて長細い、綺麗なくずし字なのか単に雑なのか分からない字でびっしりと埋め尽くされていた。

ヤマタロって、こんな字を書いてたっけ?

こんなに真面目だったっけ?


どんなことでも知っていると思っていたのに。

私はヤマタロのことが分からなくなっていた。

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