天体観測
最高気温三十五度
夏はあまり好きにはなれない。暑さは汗を通して、体の中にあるすべてのエネルギーを奪うだけでは飽き足らず、生きていく気力さえも奪っていくし、おまけにただでさえミンミンうるさい奴らが、余計にうるさく感じられる。

寝るには最悪だ。

何故か東側にある窓から日が射してきて、僕をさながらスポットライトのように照らしている。

暑さでじっとしていられないので、もぞもぞ寝返りをうってみるが、どうもしっくりこない。

もしかしたら、このままベッドのシミになってしまうかもしれないと思った僕は、八時ごろ、冷たいものでも飲もうと思って部屋を出た。

無駄に広いダイニングには誰もいなくて、テーブルの上には母さんからのメモが残されていたけれど、寝起きの今、読む気にはなれなかった。

冷蔵庫からよく冷えたミネラルウォーターを取出し、口に含むと、ほんの少しだけ目が覚めた。

僕は完全に目を覚ますため冷たいシャワーを浴びて、ステレオから迷いに迷った挙げ句、シカゴの『Saturday in the park』を流して、体が濡れたままフローリングに寝そべった。冷たくて気持ちがいい。

しばらくそうしていると母さんが帰ってきた。様子から察するに忘れ物をしたらしい。

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