Tricksters
大丈夫ですよ~高級マンションです!
腑に落ちない。
やる事すべてが裏目に出ている。
泣きながら走り去った李花を追い掛けたのに、李花は雲みたいに忽然と姿を消した。
俺は、歩いてアパートに帰る。
駅二つ分の距離だ。
たいした距離じゃない。
ジーパンの後ろポケットを、手探りで確認すると
そこには十五万とTrickstersの社員証が押し込まれている。
反対側のポケットから携帯を取り出した。
二つ折りの携帯を開くと、俺と肩を組んだ李花が幸せそうに笑ってる。
俺は高校生で色褪せた金髪、李花は制服姿の写真。
李花とは、もう三年も付き合っている。
俺にとっては、ハジメテの彼女じゃなかったけど
ハジメテ本気で付き合った彼女だ。
李花は、バカだけど
可愛くて従順だ。
俺に好かれる為に必死だったし、そんな一途な性格に惚れている。
李花が好きだ――
将来だって真剣に考えていた、だから李花のために独り暮らしを始めたんだ。
経済的には、俺だって実家にいたほうが楽に決まってる。
そこを無理して、あんなボロアパートで暮らしているのも李花との時間を誰にも邪魔されたくないからだ。