ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
突然のキス
水嶋は私の言葉を聞くとスッと立ち上がった。

帰るんだ、と理解すると胸の奥に小さな針が刺さったようにチクンとなる。


こんなことよくある女だって軽蔑されただろうか。

それとも怒ったんだろうか。


自分から遠ざけるような真似をしておいて、いざ相手が去って行こうとすると胸が痛むなんて。

私はほんとどうしようもない。


だけど水嶋は玄関へは向かわなかった。

そのままテーブルを避けて私が座っている場所まで歩いてくる。


狭い部屋だからそれは数歩のできごとで、私は水嶋の行動の意味を理解することができずにポカンと彼の行動をただ見ていた。


そのまま腕をとられて立ち上がらされそうになって、ようやく私は慌てた。


「な……っ」


なに!? って言おうと思ったのにそれは叶わなかった。


立ち上がりかけた私が顔を上げると、そこには屈んだ水嶋の顔が至近距離にあって、そのまま唇を奪われるようにキスされていた。
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