To.カノンを奏でる君
第7楽章≫波乱、そして馳せる想い。





 翌朝、花音は直樹より後から登校して来た。

 日に日に体調は悪くなるばかりだ。今日はずっと吐気が止まらず、母の前で平然を装って朝ご飯を詰め込んで、結局トイレで吐いてしまったのだ。

早起きで真面目な花音がやがて遅刻だという時間帯に登校して来たので、直樹は心配して花音に駆け寄る。


「どうしたの、ノンノン。体調悪いの?」

「直ちゃん……」


 花音の表情を見た直樹は驚いた。

 色がない、というのだろうか。顔面蒼白だ。


「バカ! 何で学校来たの!」


 直樹は思わずそう怒鳴った。

 今日一日休むくらい、平気なはずだ。


「今が大事な時期でしょ」

「本番に倒れたらどーすんのよ!」

「それまでには治すから」

「お願い、ノンノン……病院行って」

「直ちゃん」

「お願いだから。ノンノンまで病気になっちゃったら、アタシ生きていけない」


 大袈裟な、とは言えなかった。直樹が泣きそうな顔をしていたから、そう言って茶化すわけにはいかなかった。


「……分かった。願書出し終えてからでいい?」

「しょうがないわね。どうせ言ってもそれだけは譲らないでしょ」

「うん」

「譲歩しましょ。その代わり、ちゃんと行ってよ」

「分かった」


 そうしてやっと、花音は席に着いた。カバンを置き、ホッと一息吐く。
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