極悪彼氏
久しぶりに泣きそうになっちゃった…。



泣いちゃダメなのに。



お兄ちゃんがいたら、パパもコタローももっと笑えてたんだと思うと胸が苦しい。



もちろんあたしも。



ママだって渚ちゃんだって。



お兄ちゃんがいたらもっと幸せだった…。



『元気だったのに…』



お葬式でそう言っていた近所の人。



お兄ちゃんの病気のことは本当に一部の人しか知らなかったはず。



きっとコタローにも言ってなかったんだと思う。



気を使われたくから言わなかったのかな…。



梶君と渚ちゃんくらいしか知らなかったんじゃないかと…。



お兄ちゃん…やっぱり寂しいや…。



「オイ」

「コタロー…」

「何してんだよ」

「パパは?」

「母ちゃんに説教されてるから逃げた」

「そっか」

「夢羽」

「なんでもないよ~」



無性に抱きつきたくてコタローに腕を回した。



泣きそうな気持ちが落ち着く…。



「夢羽、変」

「そんなことない…」



暖かいね、コタロー。



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