社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
けれど、それは世間の事であり私はこれっぽっちも感動していない。
「優子…」
お母さんがギュっと力強く私を抱き締める。
「お、かあさん」
今日でお父さんとお母さんから離れるのはすっごく悲しいのは本当。
こんなにも早く離れ離れになるなんて思ってなかったし、だから私が涙目になるのは飯田さんと結婚するという感動ではないんだ!とスポーツ選手がする選手宣誓並みにはっきりと誓える。
「しっかりやるのよ」
「うん」
「炊事も洗濯もするのよ」
お母さんは私から離れ、飯田さんに視線を向け口を開く。
「この子は…、優子は笑顔が一番です。優子がいつも笑顔でいれる、そんな家庭を優子と築いてやって下さい」